使用量ベースのライセンス

多くの人が何らかの形で経験したことがあるのではないでしょうか。大学時代、学生寮には洗濯機がありませんでしたが、キャンパス内にコインランドリーがありました。学生でも払える金額で、学生であれば誰でも利用することができました。もしも洗濯機が壊れたら、大学側が買い換えてくれます。このようなケースにおいて、自分で洗濯機を購入することは、経済面で合理的なのでしょうか。おそらく合理的ではないでしょう。あるいは、必要なときにいつでも洗濯してくれるランドリーサービスを、サブスクリプション型で月々定額で支払う方がお得だったのでしょうか。しかし、キャンパスにいない月もあるでしょう。 結局は、そのコインランドリーで、使いたい時だけ使う方が合理的です。

ソフトウェアでも同じことが言えます。ソフトウェアの価値はどれぐらいか?アプリケーションの購入は、経済面で合理的なのか?これらの質問に一律で答えることはできません。同じソフトウェアであっても、ユーザーによって価値は異なります。価値は、特定の状況や、実際のユースケースへのソフトウェアの適合度合いによって左右されます。使用頻度はどれくらいか?代用品はあるか?但し、これらの条件を全て満たしている、世界一優れたソフトウェアであったとしても、それを購入するお金がなければ、適しているとは決して言えません。

このように、ベンダーにとってプライシング・ポリシーは極めて重要な決定要素です。高すぎれば誰も買ってくれず、逆に安すぎれば売るたびに損をすることになります。顧客とベンダー、双方のニーズのバランスがとれて初めて、真にWin-Winな結果を得ることができるのです。

ライセンスは、価格を柔軟に設定することができます。顧客のニーズに合わせて価格を調整し、あらゆるタイプのターゲット層に適したオーダーメイドのソリューションが実現できます。

このコンセプトに基づくアプローチの1つが、使用量ベースライセンス(以下CBL(Consumption-Based Licensing))です。この記事では、CBLについて、他のモデルとの違い、およびメリットとリスクについてご紹介します。また、CBLが満たすニーズ、カスタマイズCBLモデルでのソフトウェア販売の容易さについても説明します。

使用量ベースライセンスとは

使用量ベースライセンス(CBL)とは、いわゆる経常収益モデルです。俗に、pay-as-you-goライセンスとも呼ばれます。実際にユーザーが使用した分だけを支払うという意味を指し、消費に基づくライセンスとなっています。

この概念は、ガソリン代の支払いなどで既に使われており、誰もが知っていることでしょう。誰もが、使った分以上のお金を支払いたくはないはずです。携帯電話のプリペイド契約も、使用ベースの一種と言えます。顧客は使用量に応じて一定のデータを取得し、必要なときにそれを増やすことができます。CBLは、他の種類のライセンスと組み合わせることもできます。携帯電話の契約においても、データ通信パッケージの他に毎月の支払いが必要である場合もあります。このようなCBLは、IaaSプロバイダーにとって、ますます魅力的なオプションになりつつあります。ユーザーは、制限を超えたとしても、サーバーの容量を追加で購入することができます。但し、制限がない分、実際のデータ量は追跡され、その分の代金は支払う必要があります。

永久ライセンスやサブスクリプションライセンスとの違い

CBLは、従来の1回限りの永久ライセンス、サブスクリプションとは大きく異なります。

従来のライセンスでは、ユーザーはソフトウェアの代金を一度支払うと、そのソフトウェアの所有者になる、もしくは無制限のライセンスを取得することができます。多くの場合、このライセンスには、保守契約が含まれています。この従来型モデルは、B2Bビジネスでは今でも主流となっていますが、B2Cビジネスでは急速に姿を消しつつあります。それは、開発者にとって製品を改良し続けるインセンティブがない、そして一部の人々にとって初期費用が高すぎる、という欠点があるためです。

一方、サブスクリプションライセンスは、より柔軟なソリューションです。ユーザーはソフトウェアを直接購入するのではなく、ソフトウェアを使用することのできる一時的な権利と引き換えに代金を支払います。解約しない限り更新され続けるため、ユーザーはソフトウェアを継続して楽しむことができます。一般消費者の間では、このような利用方法が当たり前になっています。Spotify、Netflix、Adobeなどは、月額制のサブスクリプションサービスを提供している大手企業のほんの一例に過ぎません。新規顧客にとって参入障壁が低いことが、永久ライセンスと異なる利点です。また、常に最新の状態にある製品を利用することができます。その結果、開発者は、新規顧客の獲得が容易となり、より安定したキャッシュフローが見込めます。このように、サブスクリプションライセンスは、エンドユーザーのニーズを踏まえた、顧客満足と収益のバランスをとるための最適なソリューションとして、その力を発揮しています。このモデルは、特に定期的に更新されるコンテンツを扱う製品に適しています。

使用量ベースライセンスのメリットとデメリット

多くの場合、顧客とベンダーにとって、CBLは理想的なソリューションでしょう。特に、数量、使用期間/時間などの柔軟性が求められる場面には、非常に有効な手段と言えます。

但し、CBLモデルを適用する前に、実際の状況や要望に別のモデルがより適していることはないか確認する必要があります。利用頻度が高い場合、永久ライセンスが適しているかもしれません。製品が継続して定期的に使用される場合は、サブスクリプションライセンスの方がよいかもしれません。一方、柔軟性が最優先される場合は、CBLが最適な選択となるでしょう。

選択するモデルによって、費用は大きく異なります。上記の図を参照すると、永久ライセンスの初期費用が最も高く、その費用は通年通して変化していないことがわかります。サブスクリプションでは、初期費用は安いですが、その費用が一定の間隔で繰り返し発生します。一方、CBLの費用は、使用実態に応じて変化しています。このように、ユーザーのニーズによって、適切なライセンスモデルは異なります。

冒頭の例を思い出してみましょう。洗濯機を購入することも、ランドリーサービスの利用料金を支払うことも、この場合、合理的ではありませんでした。洗濯機(またはランドリーサービス)は、休暇期間中や海外留学中に使用されない可能性があります。つまり、実際に使用した分だけ支払うコインランドリーは、柔軟に変化する洗濯事情に応える理想的なソリューションだったのです。

企業にとっても、CBLモデルは非常に魅力的です。初期費用は0であるため、リスクは基本的になく、参入障壁も低くなります。ソフトウェアを使用しない場合には、支払いは一切発生しません。ソフトウェアは通常、利益が費用を上回る見込みある際に使用されます。言い換えれば、ソフトウェアは使用中にその代価を支払うことになります。このように、投資と利益は密接に関わっているため、CBLは投資対効果を算出しやすい選択と言えます。柔軟性と拡張性は、ここでも大きな利点となります。

シーズンやプロジェクトごとに需要やニーズが変化する企業にとって、CBLは、ビジネスの停滞時期に使用されないソフトウェアへの出費を回避し、コスト管理を行うことができる方法です。さらに、ソフトウェアはいつでも使える状態にあるため、業績回復時には、ソフトウェアをすぐに使用することができます。

使用量ベースのライセンスを提供するには?

Wibu-Systemsは、使用量ベースモデルでソフトウェアを販売するための非常に簡単な方法を提供します。CodeMeter License Centralでは、考えられる全てのシナリオをカバーすることができます。使用期間で支払額を請求するのか、それとも特定の機能を使用した回数で支払額を請求するのか、これらすべて、Wibu-Systemsのテクノロジーを用いて簡単に実現することができます。

詳しくは、過去のウェビナーをご覧いただくか、弊社営業担当までお問い合わせください。

サマリー

使用量ベースライセンス(CBL)は、モダンで柔軟性に満ちたライセンスモデルであり、ソフトウェアを新たな市場やユーザーに提供することのできる画期的なソリューションです。

 

KEYnote 44 – Edition Fall/Winter 2022

To top