HILSCHER – ドイツ – オートメーション

スマートなライセンシング技術が、産業用アプリのアクセス拡大に貢献

Hilscherが手掛けるFlagship Store for the Open Industry 4.0(OI4) Alliance Communityは、アプリストアの利便性とオープン性を産業界にもたらします。CodeMeterのライセンシングと暗号化技術も、このストア開発に貢献し、製造現場の「自動化」と「相互接続性」を叶えるアプリケーションとソリューションのライブラリをエンドユーザーに提供しています。

課題

現代の産業界において、アプリケーションは重要な役割を担っています。データの収集・分析・共有・加工により、スマートで効率的な工場の稼働が期待できます。しかし、細分化された産業オートメーション分野では、OI4 Allianceのようなコミュニティが標準化を積極的に推し進めても尚、産業用アプリケーションやサービスへのアクセスの拡大が難しいという現状があります。そこで、登場したのが、Flagship Store for the OI4 Communityです。ハノーバーメッセ2023でお披露目された、このストアは、産業用通信のスペシャリストであるHilscherとOI4のワーキンググループによって構想されました。真の「オープン性」を目指し、特定のベンダーやハードウェアに依存しないアプリやサービスを提供することで、よりスマートでコネクテッドな産業への道が開かれます。

解決

アプリストアは、エンドユーザーに恩恵をもたらす一方、全てにオープンであるが故に、不正利用や違法コピーが横行する危険性も秘めています。従って、アプリ開発に費やされた知的財産(IP)と、正規ユーザーにとっての可用性、これら両方が、プロセスを阻害することなく保護される必要がありました。そこで、産業用PC、コントローラー、その他エッジデバイスへのアクセス拡大と、よりスムーズなアプリケーション統合を実現するべく、HilscherとOI4 Allianceは、仮想化ソリューションとしてDockerを選択しました。そして、このプロセスの安全性を高める方法として浮上したのが、Dockerシステムへの統合も可能な、Wibu-SystemsのCodeMeterだったのです。アプリケーションは、JavaScript、C++、Java、.NET、Pythonなど、様々なプログラミング言語から成るため、こうした異なる言語も暗号化し、違法コピーから保護することができるCodeMeterは、最適でした。さらに、ライセンシング技術も搭載しているため、ストアの安全性・信頼性が確保されるとともに、アプリストアの運営に支障をきたすことなく、機能ごとのライセンシングやフリーミアムモデルといった革新的なオプションの提供も可能になりました。

結果

CodeMeterが搭載されたアプリストアは「Flagship Store for the OI4 Community」として開設されました。このアプリストアでは、Hilscherをはじめ、他のオートメーション分野のスペシャリスト、さらには他分野メーカー(例:Bytefabric.AI、Lenze、UReason)から提供されたアプリケーションをダウンロードすることができます。Docker技術と、CodeMeterがもつ保護・ライセンシング技術で構築されたこのストアは、産業用アプリケーション市場へのアクセスを簡素化するよう設計されています。また、Hilscher独自のデバイスおよびアプリケーション管理ソリューションであるnetFIELD.ioですでに実証されているように、OI4 Allianceによる標準化の継続的な取り組みにより、現場でのアプリケーションの統合と省略を自動化・合理化できる、標準化されたOpen Operator Cloudと連携する日も近いでしょう。

Uwe Schnepf, Head of Product Management Industrial IoT, Hilscher
「弊社のFlagship Storeは、アプリケーション開発者とエンドユーザーの双方に恩恵をもたらし、現場でのアプリケーション利用の簡便化が期待できます。私たちは、OI4コミュニティのメンバーと共に、このストアを立ち上げました。そして、CodeMeterの導入により、IPの安全性を懸念することなく、独自の技術で、特定の問題を解決することができるパートナーが増えることを期待しています。」

Hilscherについて

Hilscher Gesellschaft für Systemautomation mbHは、産業用通信分野を代表する企業です。Hilscherの製品とソリューションは、世界中のマシンの通信を支え、生産プロセスのスマート化、信頼性向上、高度化に貢献してきました。1986年にドイツのハッタースハイム・アム・マインで設立されて以来、Hilscherは、インダストリー4.0を現実のものとすべく、国際的なテクノロジーリーダーへと成長を遂げています。

産業革新への第一歩: 柔軟性と安全性の融合

Hilscherの産業用IoT製品管理責任者を務めるUwe Schnepf氏は、アプリストアを、単なる販売チャネルの1つと考えていません。同氏は、アプリストアを、アプリケーション開発者や産業オートメーションのスペシャリストが、ターゲットとするエンドユーザーとの関わり方を変革する場だと考えています。製造業は、多様で細分化されていることから、Schnepf氏は、従来の閉鎖的で独占的なソリューションでは限界があると見ています。そこで、重要となる「多様性」と「オープン性」は、より多くのソリューションが利用可能であること、そして、現場の人々がもつ多様なニーズを叶えることができることを意味します。Schnepf氏は次のように述べています。「私たちのパートナーは皆それぞれ、特定の問題を解決しています。例えば、PLCからデータを収集し、そのデータをAIを使ってローカルで分析するケースが考えられます。または、データをBIツールで分析するという場合もあるかもしれません。」各場面ごとに、それぞれ固有のニーズや問題が存在し、ベンダーごとに異なるアプリケーションが必要になることもあり得ます。

特定のベンダーに縛られることなく、産業用アプリケーションを自由に選べる状態にするには、「標準化」だけでは不十分です。OI4 Allianceのようなコミュニティによる標準化に対する取り組みは、技術的な競争の公平性の担保には寄与しますが、エンドユーザーが自由にアプリケーションを選択できるという問題の解決にはつながりません。そこで、Hilscherは、OI4のワーキンググループと提携し、こうした状況を覆すアプリストアを立ち上げました。このストアは、関心のある全てのベンダーに門戸が開かれており、特定のハードウェアやソフトウェアに縛られることはありません。「Flagship Store for the OI4 Community」と名付けられたこのアプリストアは、Hannover Messe 2023で初めて発表され、年内にもオープンする予定です。

開発者やベンダーの中には、不正利用や違法コピーのリスクを警戒し、IPの安全性や、市場に出回る製品のコントロールに対する懸念から、アプリストアの立ち上げに踏み切れないケースが多々ありました。Hilscherのアプリストアでも、当初から、こうした懸念があり、そうした中で採用されたのが、Wibu-Systemsでした。ドイツのカールスルーエを拠点に、ソフトウェアの保護とライセンシングを専門とするWibu-Systemsは、長年の経験とノウハウを、CodeMeterに結集させています。CodeMeterは、優れた保護技術と汎用性を兼ね備えた、暗号化とライセンシングを実現するソリューションです。CodeMeter Protection Suiteに含まれる暗号化ツールは、様々なプログラミング言語(例:Java、Python)で書かれたソフトウェアを、コードを変更すること無く、保護することができます。また、CodeMeterは、他のライセンシングシステムでは困難な環境であっても、IP保護やライセンシングが問題無くできるため、アプリストアに使われていたDockerや、その他の仮想環境での実装も、全く問題ありませんでした。Wibu-Systemsのプロフェッショナルサービス担当兼副社長であるリュディガー・キューゲラーは、このアプリストアにおける、市場開拓の可能性を高く評価しています。今まで隠れていた、優れたアプリケーションやベンダーが勝てる余地が、ここにはあるためです。「アプリケーション開発者が、より速く、より正確で、より優れたアプリケーションを生み出そうと、費やす努力は計り知れません。こうした努力を無駄にしないためにも、不正利用や違法コピーを防ぐことが、私たちに課された使命なのです。」

Flagship Storeを介して販売される、Hilscherや 他の開発者によって作成されたアプリケーションの保護は、自動で行なわれます。ライセンスは作成後にソフトウェアがインストールされたデバイスへバインドされ、たとえDockerコンテナが複製されても違法コピーを防ぎます。そしてこれらは、エンドユーザーへの影響を最小限に抑えつつ、バックグラウンドで実行されます。また、ライセンスの作成・管理を行うCodeMeter License Centralとの通信には、専用のライセンスサーバーアプリケーション「netFIELD App License Server」を使用します。エンドユーザーは、このサーバーアプリケーションをクリックするだけで、ライセンスをアクティベートし、アプリケーションを利用することができます。

「私たちは、OI4コミュニティのメンバーと共に、このストアを立ち上げました。」とUwe Schnepf氏述はべていますが、同社とって、これは単なる始まりに過ぎません。今後も、続々と、より多くのパートナー、より多くのアプリケーション、そして、より多くのサービスが仲間入りし、Flagship Storeは、産業オートメーション業界にとって、無くてはならない存在となり、安全で活気あるエコシステムへと成長していくことでしょう。

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